ノマズ・ガーデン

 
醸造家は1989年生まれ、現在34歳（2023年現在）のBen Schulz-Dahlenburg / ベン・シュルツ・ダーレンバーグ。

彼との出会いは昨年のオーストラリア出張時のことで、たまたま訪問することにしたヴィクトリア州のワイン産地「ビーチワース」についてリサーチをしている中で知ることになったワイナリーの１つでした。

正直に言えばそれまで全くその名を聞いたことがないレーベルでしたし、メルボルンの街中でも目にしたことはありません。それもそのはずでノマズ・ガーデンは設立以来これまで日本を含むどの国へも輸出自体をしたことがなく（つまり日本が初めて！）、オーストラリア国内の主だったコンペティションなどに登場したこともないため、日本で情報収集をしていても中々その評判は聞こえてこなかったのです。

おそらく実際のワイン産地に行き、醸造家本人とアポイントを取って交流をしなければ輸入に至ることはなかったことでしょう。

「ノマズ・ガーデン」は2017年ビーチワースに設立された小規模生産（年産3500箱）のマイクロ・ネゴシアンで醸造家のベンは両親が共に醸造家というサラブレッドです。そしてビーチワースの名声高いワイナリー「エルドラド・ロード（日本未輸入）」の2代目としても活躍している男でもあります（このあたりの背景は弊社取り扱いのLATTA / ラッタに良く似ています）。

しかし若いころはそれが裏目に出て「週末はとにかく畑仕事を手伝わされたからそれが嫌で都会に出たくて仕方なかった」と本人が語るように一時はメルボルンで環境科学を学ぶことに。

しかし結局は自分にワイン造りへの情熱が刻まれていることを再認識し、醸造家の道へ。ナパや南アフリカでヴィンテージを経験した後にオーストラリアへと戻り、コンヴェンショナルなワイナリーで経験を積みながらチャールズ・スタート大学で栽培・醸造の修士号を取得します。

そして2017年には両親が設立していたエルドラド・ロードに本格的に合流すると共に、自身のネゴス・レーベルとしてノマズ・ガーデンを立ち上げたのでした。

ノマズ・ガーデンのワインは全てヴィクトリア州北東部のワイン産地（King Valley, Alpine Valleys, Beechworthなど）の単一畑のブドウから、最低限の人的介入アプローチによって造られます。これは醸造家である彼の両親（ナチュラルワインと敢えて謳ってはいませんが）が全て畑に由来する野生酵母によって自然醗酵させ、余計な添加や介入をしていなかったから。

ワインはサヴァニャンやピノ・ブラン、ピノ・ムニエといったこれらの産地ではあまり注目を集めてこなかった品種にもスポットが当てられ、冷涼感につながるセイヴァリーさと親しみやすいピュアなフルーツ感が見事に両立しています。

全て自然醗酵で少量の酸化防止剤以外の添加物は使用していませんが、醸造中の温度管理や軽いフィルタリングなどは必要であれば行っており、単純に「ナチュラルワインブーム」に乗っかって始めたレーベルではないことが良く分かるクリーンな酒質は実に好印象。

当然ながら発展途上で完成されたスタイルではありませんが、価格も非常にリーズナブルで、醸造家ベンのハードワークをこなしながら品質に真摯な姿勢を貫く姿には今後の展開への期待しかありません。