アレクサンドル・シャイオン
エペルネーの町の南西に広がるコトー・シュッド・デペルネー地区に新たなグローワーがデビューしました。2017年に母から畑を継承して、エンジニアからグローワーに転身。2018年から自身のシャンパーニュ造りを始めたアレクサンドル・シャイヨンです。
アレクサンドル・シャイヨンは学業を修めた後、エンジニアとして働いていましたが、母方のVOLLEREAUX ヴォルロー家に属するブドウ畑を2017年に継承。エンジニアの仕事を止め、グローワーに転身したネオ・ヴィニュロンです。それまで家族の畑は全てのブドウをネゴシアンや他のドメーヌに売却していたため、醸造所もセラーもありませんでした。 このためアレクサンドルは、全くのゼロからドメーヌを創設しました。
醸造所は自宅があるアイの街中にありますが、ブドウ畑は、ヴァレ・ド・ラ・マルヌに6 つあるサブリージョンの1 つ、 Coteaux Sud d’Epernay コトー・シュッド・デペルネー地区のPierry ピエリーとBrugny ブリュニーの2つの村に広がっています。
アレクサンドルは、醸造面ではアヴィ-ズのフランク・ボンヴィルで研鑽。栽培面では、ローラン・ベナールとヴァンサン・シャルローに触発され、2017年から直ぐに栽培をビオロジックに転換しました。畑は2020 年からビオの認証を受けています。ドメーヌでは毎年剪定の前に羊を放牧して、雑草を取り除いています。
アレクサンドルの母のエリザベス・ヴォルローは、⾧年アイの自宅で、ターブルドットの宿を営んでいました。コロナによる人手不足から現在はターブルドットは止めて、ゲストハウスになっていますが、彼女は料理に深い情熱を持ち、お客様をもてなし ています。 *ターブルドット:家の主人が料理を作り、家族とゲストと一緒に大きなテーブルで食事をしながらもてなすスタイルの宿。 私も2022 年の秋にドメーヌを訪問した際に、アレクサンドルとともに彼女の手料理のラン チを頂きました。家庭料理の枠を超える、素晴らしい味わいで、ミシュランの星を挙げてもいいような感銘を受けました。
そんなプロの料理人並みの腕前を持つ母に育てられたアレクサンドルは、とても鋭敏な味覚の持ち主です。完璧主義者で、細部へのこだわりの強い彼は、最初から自分がどのように働きたいか、どんなシャンパーニュを造りたいのか明確なヴィジョンを持っていました。
この ため、ブドウ畑での細心の注意を払ったビオロジックによる栽培と、セラーでのディテール重視 のアプローチを通じて、純粋で生き生きとした表現力豊かでみずみずしい構造の美食(ガス トロノミー)のシャンパーニュを造っています。
醸造に関しては、手摘みで収穫したブドウをダイレクト・プレスし、軽いデブルバージュ(前 清澄)の後、果汁を澱と共に直接樽、もしくは素焼きの砂岩の卵型タンク(2019 年以 降)に入れてアルコール発酵。その後、引き続き自発的なマロ発酵と熟成。無清澄・無 濾過でティラージュして瓶内二次発酵とマチュラシオン・シュール・リー。ルミュアージュを手動で 行って、ア・ラ・ヴォレでデゴルジュマン。
亜硫酸は圧搾時に少量添加するのみで、その後は 無添加。ドザージュはMCR を使用しています。アレクサンドルは、MCR が最もワインに与え るインパクトが少なく、ワインの表現が開くのを手助けしてくれるもので、リキュールだとワインに別のものが加わってしまうと考えています。
ドメーヌでは、厳選したヴィエイュ・ヴィーニュから得られる最上のブドウのみをドメーヌのシャ ンパーニュの醸造に使っています。その他のブドウは全てシャヴォのコーペラティヴとラエルトに売却しています。
ドメーヌの初ヴィンテージは2018 年(一部2019 年とのアッサンブラージ ュ)で、5 種類のキュヴェが造られました。トータルで僅か4800 本となる初ヴィンテージは、 2023 年の年末にフランスでリリースされました。
弊社ではリリースに先立ち2022 年の秋にド メーヌを訪問して日本への割り当てを確保しました。既にイタリア、スウェーデン、デンマーク、 ドイス、スイスのインポーターが取り扱いを始めています。 1985 年生まれのアレクサンドルは、同世代で同じアイに住むポール・ゴッセやロマン・エナ ン、また同じシュッド・エペルネーのオーレリアン・ラエルトやセレック、さらにフラヴィアン・ノワック やティボー・ルグランなどが友人で、頻繁に交流しています。(インポータ―VIVIT資料より)