セバスチャン・フェザス

セバスチャン・フェザスは1984 年生まれの今年39 歳。ボルドーで醸造学のBTS を修めた後、モンペリエ大学で国家醸造師の資格を取得。その後、シャトーヌフ・デュ・パプのドメーヌ・デュ・グラン・ティネルや南仏リュベロンのコーペラティヴ、オーストラリア バロッサ・ヴァレーのエルダトン、アメリカのバージニア州のマイケル・シャープス、バーレン・リッジ・ヴィンヤードなど様々な国とワイナリーで研鑽を積みました。
父の引退に伴い、2012 年にフランスに戻りアルマニャックとワインの造り手であった家業のドメーヌを継承しました。ドメーヌでは土壌とブドウ木に生命力と抵抗力を与え、自然とのハーモニーとバランスが取れるようにビオディナミで栽培を行っています。セバスチャンはビオディナミの知識はありませんでしたが、同じガスコーニュ地方でビオディナミでブドウ栽培を行っているLaurent Massartic ローラン・マサルティックとDominique Andiran ドミニク・アンディランからビオディナミの基礎を学び、強い刺激を受けたのです。
その後、書物を通して独学で学ぶ一方、MABD (Mouvementde l'agriculture biodynamique)に加盟して、ビオディナミに関する様々な講習会に参加して知見を深めていき、2012 年から5 年をかけてドメーヌの畑を完全なビオディナミに転換し、満を持して2017 年から自身のワイン造りを始めたのです。
ドメーヌはガスコーニュ地方のCourrensan クランサンの村に本拠を置いています。栽培面積は25ha で白ブドウ6 品種、赤ブドウ3 品種を栽培しています。土壌は粘土石灰質で、品種毎の栽培面積は、コロンバール7.5ha、シャルドネ4.5ha、グロ・マンサン3.5ha、ソーヴィニョン・ブラン1.5ha、ユニ・ブラン1.5、バコ1.5、タナ2.5ha、シラー1.5ha、メルロー1.0ha。セバスチャンの栽培するブドウには、他のナチュラルワインの造り手達が大きな信頼を寄せており、フランツ・ソーモンやベルトラン・ジュセ、ボルドーのレ・シェ・デュ・ポール・ドゥ・ラ・リュンヌなどが毎年彼からブドウを購入しています。
セバスチャンは、農地とは自然と耕 作が混じりあったもので、壊れやすく不 安定なバランスの上に成り立っていると 考えています。このため、日々、宇宙と 自然のリズムを考慮に入れて、大地と 空と植物と、その生態系の中に調和の 取れた生の環境を作り上げることを目 指しています。特に、植物や動物、ミ ネラルを原料とする自然界のものから 作られているプレパラシオンはビオディナ ミの根幹を成すものと考えており、これ を散布することによって、生きている生 物であるブドウと植物、そしてそれを取り巻く土壌や風などの環境を活性化させています。
畑には多様性のある植物相が必要と いう観点から、ドメーヌの敷地内には、休耕地や生け垣、動物の住む場所などを少しずつ 増やしています。⾧いヒマラヤ杉の並木もあります。また隣人の小麦農家と共同で自前の ビオディナミのプレパラシオンも作っています。
セバスチャンはビオディナミによる栽培は、醸造面にも反映するべきものであると考え、自 然と、醸造添加物を一切使わない、可能な限り人為的介入の少ないナチュラルワイン、テ ロワールの個性を表現するVins Vivans ヴァン・ヴィヴァン(生きたワイン)造りへと至りまし た。
初ヴィンテージは2017 年で、2 種類のキュヴェからスタートしました。世界中でワイン造 りを学んだセバスチャンは、産膜酵母で熟成させた南西版ヴァン・ジョーヌやペットナット、プ ティ・マンサンのオレンジワインなど、今までの南西地方にはない個性的なナチュラルワインを 手掛けています。また、エチケットデザインも毎年変えるなど新時代の感性も備えています。
ナチュラルに敏感な北欧のデンマークやスウェーデン、英国、ベルギーなどのインポーターが彼の ワインを輸入しています。また、セバスチャンは自分の納得できるワインだけを造りたいとの想 いから、現在栽培面積25ha のうち、1ha がアルマニャック向け、3ha のみが自身のワイン向 けで、残り21ha のブドウは全て他の造り手に売却しています。
